『プラージュ』は創造、表現、そしてコミニュケーションの場所として、クリエイターたちが自らの作品を自らによって知らせるメディアとして、1978年5月にフランス・パリ郊外のブローニュで創刊されたアーティストマガジン。創刊者兼ディレクターはロベルト・グティエレス(Roberto Gutierrez 1939-2011)。直訳すれば”ビーチ”を意味するプラージュの誌面はとにかく自由で型破りなアイデアで埋め尽くされている。
時にページにはペイントが施され、切り取られ、削られ、折り畳まれ、しわくちゃにされ、穴が開けられ、引き裂かれる。
ポップアップなどの立体的な仕様もある。
さらには様々な立体物を接着することもあれば、ソノシート、植物、布切れ、砂塵や種子(胡麻かも)などが振り掛けられ、お菓子、女性用下着や生理用品、フランス硬貨すらも貼り込まれ、そして路上のゴミクズすら作品として用いられる。
もはや本というよりはそれ自体がアート作品のような『プラージュ』は、あのアメリカ・ニューヨーク発のヴィジュアルマガジン『ヴィジョネア(VISIONAIRE)』に多大なる影響を与えたとも言われている。(実際プラージュはヴィジョネアが創刊される13年前にスタートしている)。
プラージュを発送する際に使用された封筒(梱包材)すらもペインティングし、より一層ユニークピース(一点物)な存在へ。
33年間の出版期間中に130号まで発行されたが、グティエレスが2011年5月に亡くなったことで惜しまれつつ廃刊となった。その間アーティストだけでなく、建築家、写真家、詩人、ミュージシャンなど数百人のクリエイターがプラージュに参加した。その中にはヨーゼフ・ボイス(Joseph Beuys 1921-1986)、ヴォルフ・フォステル(Wolf Vostell 1932-1998)など比較的著名なアーティストの他、近年国内外から再評価の気運が高まっている日本の前衛芸術集団「九州派」の創設者の一人桜井孝身(1928-2016)も同誌に参加している。発行部数は各号によってそれぞれ異なり、少ないもので数百部、多くても2000部程度だが、プラージュは出版のための資金が潤沢ではなかったため実際の発行部数は公称部数よりも少ないと言われている。不思議なことに、これほどユニークな書籍であるにも関わらず、今までプラージュが日本で本格的に紹介されたことがほとんどないのは何故だろうか。現在改めて見直してみても全く色褪せず、十分鑑賞に耐え得る魅力的な存在であることは疑いようがない。
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