地図 初版 川田喜久治 写真集 THE MAP First edition Kikuji Kawada 献呈署名本 Dedication signature
広島に原爆が投下されたちょうど20年後の1965年8月6日に『地図』は発行された。段ボール製の外函、上下観音開きの内函、本文は全ページ観音開きといった挑戦的な造本が熱狂的なコレクターの間で需要を生んでいる。ブックデザインを担当した杉浦康平は、製本上の喰い込みによってノドの部分で画面が切れてしまわないよう、折りは綴じがされず、糊による接着のみの製本を採用している。当時としては斬新だったこの技術だが、経年による耐久性が考慮されていなかったため、現存するものにはページの剥がれが見られるものが多い。出版された当時は批評家たちの間では高い評価を得たそうだが一般読者にはほとんど受けなかったそう。それは今も変わらず同じ現象を生んでいる。難解であるが故なのか、現在でも高額な値段で売買される伝説の写真集だといえる。
「問え!今日、われわれは何処へゆくのか、われわれの一枚の地図は何処にあるのか」
川田喜久治写真集『地図』は、地図のないわれわれの現在の旅と世界の映像を、冷静に執拗に追求しつづけた精神のカメラ・アイの一記録である。この破壊された世界へ、「われわれは何処へゆくか」という問いさえ喪った時代の一人のカメラマンは、ただ一台のカメラだけを希望の旗の秘かな代償にして、と或る日、誰れにも知られず出発したのだった。だが、彼のもちかえったものは、ヴィジョンと輝かしい秩序に充ちたわれわれの失ったあの過去の地図ではない。
いったいここに撮されているものは何なのか?われわれは悪い世紀の夢を、強制収容所の夢を、まだみているのか?それとも、これはカメラマンとブック・デザイナーの悪意なのか?(内容見本より)
ブックデザイン:杉浦康平
パッケージデザイン:石尾利郎
テキスト:大江健三郎
出版社 publisher:美術出版社/Bijutsu shuppan sha
刊行年 year:1965
ページ数 pages:
サイズ size:H241×W160mm
フォーマット format:ソフトカバー/softcover
言語 language:和文/Japanese
付属品 attachment:函、特製タトウ、カバー、MAP 大江健三郎 シート一葉/slip case, Housed in a specially-made box, dust jacket.
状態 condition:函背少ヤケ。その他は経年並み。献呈署名あり/slightly sunburned on the spine of the slip case, dedication signature.