2018年、『プロヴォーク』は創刊から50年を迎えます。
『プロヴォーク』とは、1968年11月、美術評論家・多木浩二(1928-2011)と写真家・中平卓馬(1938-2015)によって発案され、そこに詩人の岡田隆彦(1939-1997)と写真家の高梨豊が同人として加わり創刊された同人誌です。「思想のための挑発的資料」を副題とし、写真とエッセイ、詩で構成されています。第二号からは写真家・森山大道もメンバーとして参加し、第三号まで発行しましたが、1970年3月に総括集『まずたしからしさの世界をすてろ』の刊行を最後に彼らはその活動を終え解散しました。 荒れた粒子、ノーファインダーによる不安定な構図、ピントの合っていない不鮮明な写真群は「アレ、ブレ、ボケ」と揶揄され、賛否両論を巻き起こし、ときには写真という枠を超えて大きなインパクトを同時代に与えました。 しかしながら『プロヴォーク』は現在、大変入手困難な稀覯本となっています。ゆえに実物を手にしたことのある方は少ないのではないでしょうか。
なぜ、いま、『プロヴォーク』なのか?
年々『プロヴォーク』への関心は、国内のみならず海外でも高まっています。2016年には「Provoke: Between Protest and Performance Photography in Japan, 1960-1975」と題する写真展がオーストリアを皮切りに開催され、スイス、フランス、アメリカを巡回する大規模な展覧会となりました。世界中で社会変革の大きな動きが頂点に達していた1960年代末に、既成の写真表現あるいは視覚そのものに対する異議申し立てを、カメラという手段を通じて行なおうとしていた日本の『プロヴォーク』とその周辺の活動が、いま様々な場所で再検討されようとしています。
なぜ二手舎が『プロヴォーク』を復刻するのか?
二手舎は日々古書店として運営していく中で、偶然にも『プロヴォーク』全三号を入手する機会に恵まれました。商売として考えるなら、そのまま誰かに売ってしまえばいいと思います。しかしそれだけではどこか物足りない。二手舎が出した答えは、今となってはあまりに稀少な存在となってしまい、一部の愛好家だけが所有している稀覯本としての『プロヴォーク』を、オリジナルに忠実に、より買い求めやすい価格で復刻し再び世に問うてみたい、ということでした。
2001年に発行された『THE JAPANESE BOX』(※) のファクシミリ版『プロヴォーク』と今回の完全復刻版はどう違うのか?
『THE JAPANESE BOX』内に収められているファクシミリ版『プロヴォーク』はオリジナルを複写して製作された復刻版に違いはありません。しかし本文に収録された写真のイメージは、製本時に天・地・小口を裁ち落としするため、オリジナルの写真イメージから各辺3mmほどがカットされています。また岡田隆彦氏のテキストは当時の権利関係の都合により削除されています。この度出版する完全復刻版では、オリジナルの写真のサイズを可能な限り実現し、岡田氏のテキストも収録、また本文テキスト(日本語)は英語訳と中国語訳(繁体字)の翻訳文を別刷で添付いたします。
※『THE JAPANESE BOX』とは、日本の1960年代末から70年代初頭にかけて出版された『プロヴォーク』全三冊、中平卓馬著『来たるべき言葉のために』、荒木経惟著『センチメンタルな旅』、森山大道著『写真よさようなら』の全6冊のファクシミリ版が専用の箱に収納されたボックス・セットです。2001年にドイツの出版社SteidlとEdition 7Lの共同で出版されました。現在は絶版。
ご購入後、ご不要になった当書籍は二手舎で買取りいたします。
二手舎は古書店ですので、ご不要になった書籍の買取りは随時行っております。今回出版する『プロヴォーク 完全復刻版』もその例外ではありません。ご購入後、ご不要になりましたら是非当店で買い取らせて下さい。また当店を経由して必要な方に再流通いたします。古書として再販売する際は当初の定価を超えての販売はいたしません。